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■  資金運用で気になること  ■


◇ 仕組債投資の注意点  

仕組債は2009年3月期決算で損失が拡がったため、多くの大学は懲りたはずでもう扱われていないと思っていた。 それでも、まだ売られているという話を聞くことがある。 仕組債投資で痛みを経験しなかった個人の富裕層や財団法人などである。

個人投資家の場合は元本保証でなくても本人が納得していればよいかもしれないが、 財団の資金運用では元本保証が必須で、ゼロクーポン化することも避けたいはずであろう。 たまにその運用実態を知ることがあるが、危なっかしい話が少なくない。 そこで元本保証とゼロクーポン化についていくつか注意しておきたい。

為替系の仕組債では元本確保型という名称で、元本保証風のものが出回っている。商品説明のチラシをみても 「元本の償還は100%」といったあいまいな表現が使われている場合があり、100%返ってくる通貨が何なのかわかりにくい。 実際に元本確保型の場合は、外貨で100%返っててくるものがある。 これは満期日に円高になっていれば元本損失を被る可能性があり、本来の元本保証ではない。 しっかりと目論見書をチェックし、償還時には円建てでいくら帰ってくるのかを確認してほしい。

また為替水準によって利回りが変動するパワーリバースデュアルカレンシー債やパワーデュアルカレンシー債 ではゼロクーポン化するリスクがあり、財団の経営を直撃することになる。 このようなハイリスクハイリターン商品にどうしても投資したい場合は、利払いを年2回以上にすることや 同じ通貨のものに集中させないことが重要である。

利払いが年一回だと、 リーマンショック時のように通貨が極端に変動してゼロクーポン化すると、その年度の利配収入がゼロになるリスクがあるからである。 年2回利払いであれば、もう一回チャンスが残っている。

昨今のように米ドル安、豪ドル高の局面で米ドルの水準に連動する仕組債に集中投資していると ゼロクーポン化した商品ばかり持っていることになり、利配収入が極端に低下しやすい。 豪ドルに連動する商品に集中していればその事態は避けられているが、それは運用がうまかったのではなく、 単にラッキーだったにすぎないと考えるべきであろう。時価が投資額以上になっていれば一部売却し、 通貨の分散を図ることをお勧めしたい。 (2011/6/24)



◇ これから売れそうな金融商品  

2007年以前の仕組債投資は高クーポンの実現と早期償還によって,投資期間対比でみた好パフォーマンスを投資家にもたらした. 早期償還後の再投資の繰り返しによって、仕組債を売る側の金融機関も手数料収益を得ることができ, 売り手と買い手の双方で利益を享受できていたことになる.

もちろんこの好循環は長く続かなかった. たとえば為替レートに利率が連動するPDC債やFXターン債などは2007年以前によく取引された. しかし,サブプライムローン問題から始まった世界金融危機による円高によって,その多くが低(ゼロ)クーポン化し, 2009年3月期には時価が著しく下落して現在に至っている. これらの仕組債の2010年3月期での時価評価の動向を推測すると概ね次のようになる. 豪ドルなどの資源通貨に連動する仕組債は若干の値を戻し, 低迷してる米ドルやユーロなどの主要通貨に連動する仕組債はさらに時価が下がっているはずだ. したがって仕組債の評判も低迷したままである.

これらの仕組債の早期償還が期待できないことから、再投資の資金は少なく、身動きできないのが多くの投資家の現状であろう. このような状況で投資家が新たな資金を投資するにしても,どのような商品がよいのかはノーアイデアだろうし, セールスに商品提案力を期待することも無理だろう. 国によって経済状況が違うので,欧米で売れているものが国内で売れることにはならない. 売り手と買い手の双方が手詰まりなのではないだろうか.

その一方で投資家のスタンスは確実に変化し始めている. 企業年金などで運用の利回り目標を見直し,低めに設定するという動きがみられるからである. これまでは年4-5%の無謀な利回り目標を設定していた投資家達にハイリスクハイリターン型の仕組債が売れていたのだが, 投資家が利回り目標を現実的なレベルにおけば,売れる金融商品も変わるはずである.

たとえば利回り目標を2%程度に設定した投資家がいるなら,セールスにとって手ごわい相手になる. 15年国債の最近の利回りは1.9%程度なので,これを買えば十分だからである.長期金利の上昇懸念はくすぶってい るものの,時価評価をしない投資家にとって金利上昇は大したリスクではない.

仕組債の低流動性や手数料などを差し引いて考えると,利回り 2%の目標であれば利率 2.3%程度の商品が求められる のではないだろうか. これを満期期間10年程度で設計できなければ,15年国債に対するアドバンテージが感じられない. 10年国債の最近の利回りは1.3%台なので,利率2.3%の金融商品の超過リターンは約1%である. したがってこの超過リターンをできるだけ安全に実現する金融商品が求められることになる.

コーラブル債(預金)は早期償還(コール)される可能性のある元本保証型の債券(預金)である. とくに早期償還の時点が1回のものをワンタイムコーラブル,複数回あるものをマルチコーラブルという. マルチコーラブルのほうが早期償還リスクが高いため利率も高めになる. 国債利回りより高めの固定利率が設定されている場合,その超過リターンの源泉は早期償還リスクだけなので時価評価損のリスクは小さい.

マルチコーラブル債はわかりやすい金融商品でずいぶん昔から扱われてきているが, その時価評価には金融工学上の難題があることが金融技術者の中ではよく知られている. 昨今のような金利状勢下では発行しにくいかもしれないし,10年で利率2.3%を実現できるかどうかもわからない. 金融工学と商品設計の両面で困難を伴う商品だが, 金融機関にはさらに努力を重ね,魅力的な商品を提供していただきたい. (2010/3/25)



◇ 元本保証型の金融商品が減損になる場合とは   −国債増発の2次災害−

この夏のある学会で発表した際,「(2009年3月決算で)ゼロクーポン化した仕組債で, 元本保証型でも減損になった例があるか」という質問を受けた. その時の経験値として「元本保証型では減損の例はないと思う」と答え,質問者も納得していたように覚えている.

金融商品の元本保証に関しては,今年1月6日の文科省の参事官通知「学校法人における資産運用について」で, 元本保証型でない金融商品による運用は慎重に取り扱うべき,と求めている.同じストラクチャーの金融商品であれば, 元本保証型のものに比べて元本保証のないものは時価変動のリスクが2-3倍高いことがあるので, このような通知は道理にかなったものといえよう.

しかし,元本保証型なら安心できるというわけではない. 2007年前後に売れたハイレバレッジの元本保証型仕組債がゼロクーポン化すると, その価格は残存28年のゼロクーポン債とほぼ同じである. 3月の30年スワップ金利は約1.8%だったので,残存28年ゼロクーポン債の価格は約60円である. 今年3月期に元本保証型の仕組債が減損にならなかったのは, 長期金利が非常に低かったという幸運によるものだとわかる.

その後,長期金利はじわじわと上昇し,10月以降は国債増発懸念によってさらに上昇している. このまま長期金利が上昇し,ドル安株安が続くと来年3月にはどうなるだろうか. 2007年に買った仕組債の残存は27年である.残存27年のゼロクーポン債の時価が50円以下になる金利は2.6%と計算される. つまり27年金利が2.6%以上に上昇すると,ゼロクーポン化した元本保証型仕組債は減損になりやすくなる.

その懸念から30年スワップ金利の動向をみているのだが,最近は2.3%前後まで上がっており, 2.6%が射程内に入ってきた. 今年の3月期は元本毀損リスクありタイプのパワーデュアル債の一部に減損が拡がったが, 現在のように1ドル90円程度のドル安が続けば,来年3月期の長期金利の水準によっては元本保証型のパワーリバースデュアルカレンシー債 に減損が拡がることもある.株価連動債も30年ものでゼロクーポン化していれば同じ運命だ.

ではどうすればよいのだろうか.今ロスカットしても時価は50円ちょっとだろう.来年3月に減損になるとしても大差はない. 手の打ちようがないのが現状であろう.利率が30年金利に連動する仕組の3年債でもあれば金利上昇のヘッジになるのだが.

国債増発による長期金利上昇の負の経済効果についてはよく知られているが,学校などの非営利法人の 資金運用での減損損失が拡がるという2次災害までは懸念されていない.この財務損失は教育や研究などへの 投資を委縮させ,長期的な意味で日本の成長力に影を落とすことになる.

元本保証型の仕組債は減損にならないという神話が昔話になれば,一つの教訓にはなるが, 投資家の懐が傷み続ける限り金融商品ビジネスの不振も続くだろう.仕組債アレルギーが蔓延している中で, その汚名を返上できるような金融商品の登場に期待したい. (2009/11/6)



<不定期に続く・・・>