研究テーマ

 マイクロ波は数ある電波の中でも周波数が高く、無線機の小型化、通信速度の向上、電波の直進性など優れた特長から今日の先端ワイヤレスに欠かせない存在になっています。応用としては、身近なところでは携帯電話、WiFi等のモバイルワイヤレスがあるほか、より高い周波数のマイクロ波を使った衛生通信、各種レーダ、基地局間Point-to-Point通信などが無線インフラを支えています。




  

 そのようなマイクロ波を使うワイヤレス端末やワイヤレスシステムの性能を決める「心臓部」の役割を果たすのが、高周波デバイス(電波を制御する小さな機能回路)です。ワイヤレスが日々高度化する中、デバイスにも常に進化が求められており、本研究室では新しい手法による高周波デバイスの高性能化に取り組んでいます。



(1)メタマテリアルを用いたマイクロ波回路の研究

 2000年代の初頭、負の屈折率と負の透磁率を有する媒質を人工的に作り出すことで光が自然界にない振る舞いをすることが見い出され、そのニュースは驚きをもって迎えられました。なぜなら、そのような人工的に作られた超物質(メタマテリアル)では、電磁波伝搬の伝搬が電磁気学の教科書が教える「右手系」ではなく、「左手系」の法則に従うからです。その結果、透明マントなどSF小説の中の話でしかなかった現象が現実のものになる可能性が出てきました。

 メタマテリアルの発見は、光と同じく電磁波の一つである電波を使う無線にも大きな影響を及ぼしています。メタマテリアルの本質を理解するためには、本来は発展的な物理学の知識が必要となります。しかし、幸いなことにメタマテリアルは「右手/左手系複合線路(CRLH線路)」という形で回路的に表現することができ、学部レベルの電磁気学とマイクロ波工学の知識でも、卒研テーマとして取り組み、十分その面白さに触れることができます。

 本研究室では、マイクロ波回路において電磁波を制御する「スタブ」にCRLH線路を適用することで、アンテナやパッシブ回路が主な適用対象であったメタマテリアルを、低位相雑音発振器(資料1)や高効率増幅器(資料2)などアクティブ回路に活かすことを提案し、実証実験を行っています。

  

低位相雑音発振器とその応用例


(2)無線電力伝送に向けた高周波デバイスの研究

 電波は、無線通信では「情報」を運ぶ役割をしますが、昨今のエネルギーに対する社会の関心の高まりを背景に「電力」を送る手段として注目されています。


  

参考:高校生向け学科紹介ビデオ

 無線電力伝送(Wireless Power Transfer)は、宇宙太陽光発電によるエネルギーをマイクロ波で地上へ供給したり、身の周りの電波からエネルギーを回収することを可能にするなど、低炭素・省エネルギー社会の実現に貢献すると期待されています。本研究室では、無線電力伝送の様々な応用に対応した整流回路の研究に取り組んでいます(資料3)


  

マイクロ波整流回路


 また、無線電力伝送は将来の電気自動車(EV)の普及に欠かせない非接触充電を可能にします。このような用途では10kW級の大電力と10MHz級の高速スイッチングに対応した高性能インバータが必要となります(電気シェーバーでは数W、数10kHz)。この難しい課題を解決するため、電気工学科等との共同研究で電磁界シミュレーションによるインバータやアンテナの解析を行っています(資料4)




研究環境

新しいマイクロ波回路デバイスをシミュレーションと実験を通して実証するため、(1)設計環境、(2)モノ作り環境、(3)測定環境のバランスをとりながら、研究に必要な設備の整備を順次進めています。

(1)CAD設計環境

デバイスを設計するCAD環境としては、マイクロ波回路シミュレータ(Agilent社 "ADS")と電磁界解析シミュレータ(Sonnet社 "em")を導入しています。これらは企業の研究開発の現場でも使われていますが、4年次の卒業研究でも最も使用頻度の高いツールとなります。研究室に配属された学生は、3年次後期の「通信ゼミナール」でこれらのCADの操作方法の基礎を実習し、卒業研究に備えます。

(2)モノ作り環境

デバイスの研究は、最終的にはモノを作ってシミュレーションを検証することで完結します。その際、試作品の測定結果をもとに再設計を繰り返すこともあります。このフィードバックを効率化するため、平面回路の配線パターンを自動加工する基板加工機を導入しています。

(3)測定環境

  1.ベクトルネットワークアナライザ(Agilent 8510C: 50 GHz)

  2.ベクトルネットワークアナライザ(Agilent 8753ES: 6 GHz)

  3.RFプローブステーション(Suss Microtech PM5)

  4.スペクトラムアナライザ(Advantest R3273: 0-26.5 GHz)

  5.シグナルジェネレータ(Agilent 8665B: 0-6 GHz)

  5.パワーメータ・パワーセンサ(Agilent E4418B, E9301A: 0-6 GHz)

  6.広帯域パワーアンプ(Mini-Circuits TVA-11-422: 10-4200 MHz)

  7.電子負荷装置(TEXIO LSA-165)

  8.多出力直流安定化電源(TEXIO)



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